神戸大学演劇研究会 はちの巣座 稽古日誌~Bee Happy~

神戸大学演劇研究会はちの巣座のブログ。レッスンデイズ、部員の毎日、など。

最後の嘘@ジュリ

皆さん、お久しぶりです。
秋冬公演で演出だったジュリです。

秋冬公演が終わって、卒業公演も終わって、新年を迎えて、バレンタインも終わりました。
まだブログバトンを受け取ったままゴールしていなかったので書きます、ごめんなさい。
ブログのテーマ、どなたか覚えている方はいらっしゃるでしょうか、
「嘘にまつわるエピソード」と「みんなで繋げる作り話」です。

さっそくですが、「嘘にまつわるエピソード」から…
最近ついた最大の嘘といえばもちろんこれです、ブログをかくかく書きますといって二か月も延ばしたことです。
ごめんなさい!本当にすみません。
言い訳はいろいろあるのですが、要因の一つがもう一つのブログテーマ、
「みんなで繋げる作り話」です。
もう長いし話めちゃくちゃだし最後話を終わらせなければいけないの本当につらい!
演出と同じくらいつらいです、嘘です。
演出の方がもっと大変でした。

では役者で繋げた作り話に終止符を打ちたいと思います。
なんの話かさっぱり忘れてしまったという方も多いと思うので最後に繋げたものを載せておきます。
話を始める前にせっかく公演が終わった後に書いているので一言だけ、

今回の秋冬公演に関わって下さったすべての方に感謝します。
本当にありがとうございました。
次は新入生歓迎公演です、たくさんのお客さんを、そしてたくさんの可愛い可愛い後輩を迎えられるよう精進しますので
またのご来場お待ちしております。

では作り話をラストに失礼します。

今日も朝から取材のために路線バスを乗り継いでいた。
手にはタンポポの花束、今から取材に向かうK戸市の象徴の花らしい。
元々新聞社で働いていたはずだったが、いつのまにか父の背中を追って地域の密着型の地方情報誌で記事を書くようになっていた。
今日は公害から立ち直ろうとする市のとあるカップルを取材する。
大きな湖を囲むように集落がつくられたK戸市は高度経済成長期、アラビア語圏から輸入した鯉の養殖で巨万の富を手に入れた。
しかし外来種によって湖の生態系がくずれてしまい、昔から神として崇められていた湖は藻ですっかり濁ってしまった。
当時のお年寄りたちは神の鉄槌が今にも下ってしまうことを恐れたが、若者たちは次第に鯉が売れなくなりお金が入ってこなくなることの方がよっぽど怖かった。
そこで若者たちは次は湖に生息する珍しい生き物で一儲けしようと鯉をすべて抹殺することを計画した。
鯉をすべて殺すための薬も同じアラビア語圏から輸入した。なんでもその薬は金色で饅頭のような形をしたものだったらしい。
業界では金色のブルーレットという名で取引されていたらしいが今はどこでも使われていない。
なぜなら金色のブルーレットは鯉だけでなく、便器の黒ずみに加えて、人間もきれいに排除してしまうものであったからである。
空気中に排出された金色のブルーレットの有害物質を吸った人間は血液がドロドロになった。
汚染された血液はカレーの様に茶色できつい匂いを放つようになり最終的には息ができなくなってしまう。
この公害は社会的問題として大きく取り上げられ、90年代に入ってから金色のブルーレットの使用を禁止する法律が制定された。
湖の汚染が完全に消えるまで湖周辺は立ち入り禁止となっていたが、数年前とあるカップルが侵入した。
湖が随分綺麗な姿を取り戻していたことから大丈夫だろうとボートを漕いでしまった。
しかし目に見えない空気中の汚染は全く消えていなかった。
結局カップルは二人とも意識不明で病院に搬送された。
女はなんとか意識を取り戻したが、男はたっぷり空気を吸ってしまったため意識を取り戻すことなく血液はどんどんカレーになっていった。
それが今になってカレーになった血液を洗浄する治療法が生み出され、その手術によって男は無事意識を取り戻したらしい。
そこで私がこの話を記事にするよう駆り出されたということである。
まだ男は妄想や幻覚を多々見ているようだが順調に回復に向かっているらしい。
個人的には勝手に立ち入り禁止区域に入ったカップルなんて自業自得だと思ってしまうが、
そこはお仕事、感動的な記事に見事仕上げて見せる。

K戸市に入ってからしばらく経ったが窓から見える景色を見る限り、
タンポポが咲き乱れる季節はまだ遠いように感じた。

もういいや、完


以下、完成版です。

これはどこにでもいる平凡な1人の大学生の話です。
彼は今年で大学2年目。
学校にバイトにサークルに毎日忙しい日々を送っています。
ある日、彼は前日にバイトを頑張り過ぎてしまい授業中に居眠りをしてしまいました。

そうです、彼は疲れすぎていたのでした。急き立てられるように満たした慌ただしい毎日。そんな日々からの一時の脱却。眠りとは時としてそういうものになりえるのです。
教授の声は不明瞭に遠ざかり梢を渡るそよ風へ、レジュメの文字はぼやけてにじみ舞い拡がり、木漏れ日とそれを反射して輝く水面へ、ゆっくり漕ぎ出した首の揺らぎはやがて全身に伝わり、気づけば彼は気持ちの良い午後に、ボートを漕いでいたのでした。
彼の前には、かわいらしいアヒルが座っています。
「君は…」
「そう、あたしよ。」
アヒルはあだっぽく言いました。
「あなた、少し疲れてるのよ。つまりね、あたし達、同じ穴のムジナってわけだわ。あたしも水の中で足をばたつかせるのには辟易しちゃってたのよね。ねぇ、一緒にこのままゆっくりボートを漕いでいればいいわ。」
愛らしい同乗者は、その水かきのついた黄色い足をちょっとあげてみせ、コケティッシュに笑っています。
彼はとろけるような思いでオールを動かし続けました。はねる水は、固くぎゅうぎゅうに詰め込まれていた日々を砕け散らすように光ります。
その時、ボートの下から不気味な泡がたちました。その正体は、水底の鯉でした。
鯉が泡に閉じ込めた声は、彼だけに聞こえているようです。鯉はニヒルな声でこう告げました。

 「والعاملون بها منبعا للوقار ونموذجا في العلم والفضيلة !」
突然のアラビア語。
その鯉は流暢なアラビア語を使いこなします。
しかし、何を言ってるか分からない僕はほとほと困り果ててしまいました。

 「ينبغي لمدرسة كيئو أن ترضى بكونها مؤسسة !مدرسة كيئو" فوكوزاوا !」
なおも話続ける鯉。
しばらく、ニヒルなアラビア語だけが空しく響き渡っていました。
鯉の必死さに、僕は何とかしてこの鯉と話したい。
次第にそう思うようになっていきました。

僕はアヒルに尋ねました。
 「どうすれば僕はアラビア語をはなせるようになるの?」
アヒルは言いました。
 「この湖の底にはアラビア語が話せるようになる、不思議なまんじゅうが沈んでいるの。
それを取ってくるしか道はないわ…」
 「それを取ってくればいいの?」
 「でも、湖には危険がたくさんあるの、それでも行くの?」

僕は少しの間迷い、そして決めました。


「うん。僕、行くよ。この湖の底へ。」

僕のことばを聞いたアヒルは悲しそうな顔をします。

「どうして?あなたの話し相手なら私がいるじゃない?言ったでしょう、あたし達、同じ穴のムジナだって。このままここで一緒にボートを漕いでいましょうよ。」
「うん。でもね、僕は思ったんだ、この子と話してみたいって。」

静かな湖畔に僕の諭すような声が響き渡ります。
それは、この何処か気だるげな、それでいて澄み切った空気にしみこむように消えてゆきました。
そうして、ただ鯉のはく泡の音、そして僕とアヒルの呼吸の音だけが支配する時が過ぎてゆきます。
僕はじっとアヒルを少し熱っぽい瞳で見つめ続けました。

ついに、僕の隣で遠くに浮かぶまんじゅうのような雲を眺めていたアヒルが口を開きました。

「…あなたの望みを叶えることが夢の役目だものね。」

アヒルの言うことは僕にとってはよく分かりませんでした。

「そんなに話せるようになりたいのね、アラビア語が。」
「うん。」
「分かったわ。あなたの思うようになさいな。あたしはここで、あなたが戻ってくるのを待ってるわ。ずっと。このボートを漕ぎながら。」
「ありがとう。」

そうして、僕はボートから身を乗り出し、湖に飛び込もうとします。
いよいよ飛び込むというその時。僕は思い出したように、何処か不安げにこちらを見るアヒルにたずねました。

「そのアラビア語を話せるようになるまんじゅうって、どういうもの?」
「…中にイチジクあんが入った、光り輝くまんじゅうよ。」
「ありがとう。イチジクは僕の大好物だよ。いってくるね。」

僕は湖に飛び込みました。
ぐんぐん遠ざかる青色に鈍く輝く湖面と目の前の見通せない世界に一抹の不安を覚えながら、湖の底をめざして潜ってゆきます。

暗い湖に飛び込み、潜っていきました。鯉はしばらく僕をつけてくるかのように泳いできました。嫌だな、怖いなと思っていましたが突然、
「خطورة، وجاء جئت من خطورة بعيدا! !」
鯉が叫び始めました。
「خطورة، وجاء جئت من خطورة بعمن خطبعيدا! !!」

僕は訳が分からず鯉の様子を伺っています。しばらく叫び、グルグルと何かに迷うかのように泳いだ後、鯉が僕に向かって突進してきました。
「えっ…痛っ?!なんか僕悪いことした?!」
そう思い、逃げようと下を向くと、大きなクラゲの大群が長い触手をこちらに向けてフワフワとあがってきているのが見えました。

それはまるで、ポ○ットモンスターのドククラゲが大量発生しているかのようでした。

「これがアヒルの言ってたことなのか」
そう思って方向転換すると、僕の目にとんでもないものが写りました。

僕の目に映ったもの、それは巨大なジャガイモでした。
皮をむかれたジャガイモのかけらが遙かな水面からドボドボと降ってきているのです。
僕は最初何のことだかわかりませんでしたから、興味深げにそれを眺めていました。
その次に降ってきたものは赤いかけらで、どうやらニンジンのようです。
そのまた次には牛肉のようなものが降ってきて、すでに炒められているような色です。
その瞬間僕は戦慄しました。
「この湖、カレーにされる……!」

そうです。詳しいことは分かりませんが、誰かがこの湖の上から具材を投入し、
一皿の広大なカレーにしてしまおうと目論んでいることに気づいたのです。
「となると、僕たちはもうすぐ煮られてしまう!」
改めて水底のほうを見ると、ドククラゲのようだったものは実は、
温度の変化により逆巻いて沸き上がった水の流れのひとつひとつでした。
もうすぐそこまでマグマのような熱は迫ってきています。
僕は恐怖に耐えられず、一目散に水面を目指して泳ぎました。
しかしあと数メートルのところで、突然かの鯉が僕の前に追いつきます。
鯉は僕と向かい合い、そのヒゲに緊張をもって僕の眼を見据えました。
鯉の目には、言葉が伝わらない事への諦念と、それでも僕に伝えたい強い何かがきらめいています。
僕はさぐりさぐり、なでるようにその何かを読み取ろうとしました。
音のない時間。すると不思議と勇気が心の奥からほのかに芽吹いてきます。
はじめの僕の決断は間違っていない。この子と話せるようになりたい。
この子と話せるようになりたい。
いつの間にかそう確信して僕は再び水底に切り返しました。
肌が崩れ落ちそうな熱さと、骨がちぎれそうな激しい水流に自然と涙が出て、
それでも胸にある決意が柱となって僕をただ一点へ、
イチジクあんが入った光り輝くまんじゅうへと引き寄せていきました。
意識と身体の二つが別々の領域を持っているとしたら、先に無明へ落ちたのは意識のほうでした……

……
「……ここは?」
気がつくと僕は小さな洞穴のようなところに来ていました。
びしょびしょに濡れそぼった服はところどころ破けていて、手も足も線条の傷だらけです。
明るい水色の鍾乳洞が連なる空間の真ん中に、
光り輝くまんじゅうがありました。
鯉は傍らの水たまりでぐったりしています。僕はまんじゅうを齧り、
鯉に話しかけました。
「大丈夫かい?」
すると鯉もニヒルな声でこたえます。
「きみにそんなに根性があるなんて、思ってもみなかったよ」
「君のおかげだよ、ありがとう」
「いいんだ、ぼくのためでもあるんだからさ」
「……いままで、君は一体何を話そうとしていたんだい?」
「……それはね……」
そこまで言うと鯉は突如跳ね上がり、黒いローブを着た骸骨の姿に変身しました。

「弱ったきみの魂を……」



ある病室。冬。暖かく風が光っている。
そこに色彩はほとんど無く、やわらかそうなシーツの感触と、
ビンに差された、細い茎のタンポポだけがある。
そのタンポポの右のベッドには男が、左のベッドには女が横たわっている。
どちらも、頭に包帯を巻いている。
カツンカツンと靴の音がして、部屋と同じように真っ白な医者が
一皿のカレーを片手に、スプーンをもう片手に持ちながら入ってきた。
香ばしい匂いが部屋に満ちると、それに
つられるかのように女がうわごとをつぶやいた。
「ごめんなさい……湖をめちゃくちゃにすれば……」
「あなたがまた……」
「ここで、ボートを一緒に……」
その言葉を医者は聞いていた。
彼女の回復は近いだろう、と思いながら。
男のほうの容体の悪化を、半ば諦めの目で眺めながら。
シミが白衣につかないよう、器用にカレーを食べながら。


男は検査の度にタンポポの花弁を1枚取り、それをずっと見つめていた。

女の体調は全快と言えるほど回復したが、うわごとだけは治らずいい続けているのだった。
ビンにさしたタンポポの花弁が1枚になったある日。

男の病の手術が施された。



.......メス....


.....カレー..........


........止血......


.....カレー......


.......水.......



.....................


13時間にも及んだ大手術がおわり手術室から出てきた医者の白衣にはカレーのシミがマーブル状に染み付いていた。だが、医者はその汚れた白衣を気にすることなく、じっと男の頭を見つめていたのだった。

病室に戻ると男は最後の黄色い花弁を取った。

今日も朝から取材のために路線バスを乗り継いでいた。
手にはタンポポの花束、今から取材に向かうK戸市の象徴の花らしい。
元々新聞社で働いていたはずだったが、いつのまにか父の背中を追って地域の密着型の地方情報誌で記事を書くようになっていた。
今日は公害から立ち直ろうとする市のとあるカップルを取材する。
大きな湖を囲むように集落がつくられたK戸市は高度経済成長期、アラビア語圏から輸入した鯉の養殖で巨万の富を手に入れた。
しかし外来種によって湖の生態系がくずれてしまい、昔から神として崇められていた湖は藻ですっかり濁ってしまった。
当時のお年寄りたちは神の鉄槌が今にも下ってしまうことを恐れたが、若者たちは次第に鯉が売れなくなりお金が入ってこなくなることの方がよっぽど怖かった。
そこで若者たちは次は湖に生息する珍しい生き物で一儲けしようと鯉をすべて抹殺することを計画した。
鯉をすべて殺すための薬も同じアラビア語圏から輸入した。なんでもその薬は金色で饅頭のような形をしたものだったらしい。
業界では金色のブルーレットという名で取引されていたらしいが今はどこでも使われていない。
なぜなら金色のブルーレットは鯉だけでなく、便器の黒ずみに加えて、人間もきれいに排除してしまうものであったからである。
空気中に排出された金色のブルーレットの有害物質を吸った人間は血液がドロドロになった。
汚染された血液はカレーの様に茶色できつい匂いを放つようになり最終的には息ができなくなってしまう。
この公害は社会的問題として大きく取り上げられ、90年代に入ってから金色のブルーレットの使用を禁止する法律が制定された。
湖の汚染が完全に消えるまで湖周辺は立ち入り禁止となっていたが、数年前とあるカップルが侵入した。
湖が随分綺麗な姿を取り戻していたことから大丈夫だろうとボートを漕いでしまった。
しかし目に見えない空気中の汚染は全く消えていなかった。
結局カップルは二人とも意識不明で病院に搬送された。
女はなんとか意識を取り戻したが、男はたっぷり空気を吸ってしまったため意識を取り戻すことなく血液はどんどんカレーになっていった。
それが今になってカレーになった血液を洗浄する治療法が生み出され、その手術によって男は無事意識を取り戻したらしい。
そこで私がこの話を記事にするよう駆り出されたということである。
まだ男は妄想や幻覚を多々見ているようだが順調に回復に向かっているらしい。
個人的には勝手に立ち入り禁止区域に入ったカップルなんて自業自得だと思ってしまうが、
そこはお仕事、感動的な記事に見事仕上げて見せる。

K戸市に入ってからしばらく経ったが窓から見える景色を見る限り、
タンポポが咲き乱れる季節はまだ遠いように感じた。

もういいや、完




  1. 2017/02/15(水) 23:36:42|
  2. 約三十の嘘
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